無題

最近、暑くなってきた。また夏がやってくる。
中学生のころ、実家で猫を飼っていたことがある。父親が仕事先から連れてきた猫だった。連れてきた、という表現は少しズレている。ついてきた、という感じだろうか。父親が車を運転して帰路についていたら、カーブでハンドルを切るたびに「みゃぁぁぁ」という声がしたらしく、不審に思って車を止めて外に出たら車の下から子猫が出てきたらしい。今考えてみたら驚くような話だ。
家まで連れてきたはいいものの、母親が動物嫌いだったのでその猫は捨ててくることになり、当然父親がその猫を捨ててこの事件(?)は終わるはずだった。ところが1ヶ月後、父親が「ちょっとついて来い」と車で2分ぐらいの作業小屋(父親は元大工。小屋とは言っても3階建てで、知らない人が見たら普通の一戸建てにしか見えないだろう。田舎はよくわからない土地が多いのである)に僕を連れて行ってくれた。母親に内緒でその猫を飼っていたのだ。今考えてもいい話である。
その猫が死んだのが、今から4、5年前のこの季節だ。
猫は「グレイ」と名づけられた。体中がねずみ色だったからだ。飼うことになった当時はまだ本当に小さい子猫だったが、何ヶ月かすると立派な雄猫になった。まだ小さい時は5メートルぐらいの高い高いをしたり、大きくなってからは両前足をつかんで後足だけで立たせて歩かせたりしていた。
3年ぐらい猫との別居生活が続いたが、ある日猫は近くの国道で轢かれていた。父親と二人で近くの砂浜に埋めた。僕が穴を掘らされたのを覚えている。
こんなことを急に思い出すのも、以前の日記でアップした猫のジャケットのCDがディスプレイに出てくるからだ。全然飼っていた猫とは似ていないのだけど、見ていて何というか、悲しい。