ミーハーは好きじゃないと言いつつも

僕ぐらいの年齢の人なら大体がそうだと思うのだが、自分の場合初めての人に自己紹介するときに質問される項目は大体決まっていて、それが

  1. 職業(学生かどうかということだろう)
  2. 大学名
  3. 学年
  4. 学部

である。大体この順番だと思う。もちろん前後したり他の質問が間に挟まったりはあるのだけど。ただし学部を訊かれて「文学部です」と言った直後に、必ずといっていいほど訊かれるのが、「好きな作家」である。高校生の時までは少し間をおいた後、「村上春樹筒井康隆、そして北杜夫かな。(今考えると接点が無いような気がする)ただ村上春樹ってなんかミーハーな感じがしてなんかね」と言っていた気がする。
今の僕にも少しは当てはまることなのだけど、当時の僕は「流行りもの」があまり好きではなかった。当時の音楽シーンでいうとミスチルが売れてくれば(その当時でも彼らの人気はすごかったけれど)ラルクに乗り換え、それも売れてくればピロウズを聴いたりという感じである。「他人と違うものを聴くということ」それ自体で自分と他人との差別化を図ろうとしていたのだろう。
読書についてもそれは一緒だった。高校生の頃に僕がいたクラスは理系のクラスだったのだが(思えば僕も最初は理系だったのだ)、それでも読書が好きなやつというのは割といて(女の子のほうが多かったかもしれない)、最近読んだ本で何が面白かったかなどを交換していた。ある者は太宰が好きで、またある者は三島が好きで、ある者は辻仁成が好きだった。彼らに僕を加えて話をしていると、なぜか自分がミーハー文学っ子のような気がして居心地が悪かった(今考えると辻好きのほうがミーハーな気がするのは気のせいか)。それでも本の話をするのは学校での楽しみの一つだったから、彼らとはいい友達だったのだけれど。あの中で初め僕が文学部に行くと思ってたやつってどのぐらいいたんだろうか。
時は流れ大学生になって、新しくできた同じ学部の友人と好きな作家の話をして、先のような回答をすると、意外と皆「そうそう、ミーハーな感じがする。でも好きなんだよね」的な会話になる。なんだ、皆同じこと考えてんだなと思うと少し心が晴れたのを覚えている。
それ以来、もろもろの事情で長らく読書から離れてきたけど、そんな昔のことを思い出しながらやっと「海辺のカフカ」を読み始めた。まだそんなに読んでいないけど、構成がどことなく「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を彷彿とさせる。ストーリーはもっとリアルになっていると感じる。
・・・とここまで書いてきて気づいたのだけれど、春樹を読んでいながらBilly Harperを聴いてるってのは自分でもちょっとどうかしてるんじゃないかと思う。